(2011.10.25)
■討議演習における相談役、委員などの質問役
面接演習の運用において、相手役部下役の重要性をさきに述べた。この討議演習では、そう言う役割はないので、ふつうは、受講者だけで討議をする。しかし私はこの仕事を始めてから数年して、気がついたことがある。面接なら、部下役の質問、反論に適切に応対できなければ、それが効果的な面接になっていないことが、誰の目にも明らかになる。しかし討議だと、たとえば新任課長研修だとして、もしも新任課長にふさわしい質的討議になっていないとしても、「まあ、こんなものだよ」と言うことでそのまま誰も気づかずに終わってしまうかも知れない。中には、議論が核心に迫ることをなぜかあえて避ける討議者がおられて、その人に引っ張られると当然、迫力を欠いた審議になってしまう。そう言う場面を私は折々目にした。そして何より「そのような討議ではいけないのでと講評のとき、もっとどうしたらよかったか話してください」とクライアントの人事や教育担当者に討議後に言われることが折々あった。もちろんあとで指摘しても良いのだが、それだと面接演習のビデオを見るようにはなまなましくないため、効果は半減以下になる。
そこで、私はある時期から、必要により討議者にその場で質問できる講師側の役割として、ケーススタディ上の会社側相談役、○○委員会委員長などの役割を設置した。要するに質問役である。この結果、もしも討議がとても安易な結論に流れそうになったり、明らかに不十分な観点しか審議されていないような場合は、リアルタイムに受講者に気づいて頂くことができるようになった。もちろん、私たちの観点が特別に警抜であるなどと言う気はない。私たちがつくったケーススタディであり、多くの会社で討議を見るのだから、その瞬間では、私たち講師の方が観点が広いのはあたりまえである。私たちの役割は、それをひけらかすことではなく、もしも討議の展開が不十分なら、それを受講者にみずから気づいていただくことである。
が、この質問役も、面接の部下役と同等以上の訓を要する。面接の部下役なら、そこにいるのは受講者たる相手の上司役だけだが、この討議演習会場には、全受講者がいるのだから、よほどクリアに、一聞了知の本質的質問ができなければならない。これもアセスメント研修の質的向上を図るため、努力してきたところである。