実戦問答No.12
何がうれしいかと言えば~アクションラーニングに出かけて行って~(2011.05.23)
アクションラーニング実施のためにクライアントに出かけて行ったとき、何がうれしいかと言えば、受講者メンバー達が、私が来ることを楽しみに待っていてくれることである。その場が、他には絶対にない自由で前向きな、そして絶対に安心できる場であると彼らが信じきっていることが私に伝わってくる時である。そう言うときは、その日のテーマも、あらかじめ自律的に選定している様子がよくわかる。こんな時私の役割は、教科書に書いてあるようなファシリテーターそのものになる。とてもきれいで結晶のように純分化された役割である。
こんな、時間も空間も限られてはいるが、理想郷に近いようなセッションでは、良い意味で全く健全な空気の中で、時に私の介入や質問などまるきり相手にされない時もある。それは彼ら現実に責任を負うメンバーたちが、本来部外者である私を真にアソシエイツ、同朋的なメンバーとして受け入れてくれている何よりの証左だと思っている。これは筆では説明し尽くせない。これほどアクションラーニング・コーチとしてここちの良い瞬間はない。
しかしそのような場になるには、最低半年はかかるだろう。それまではメンバーもコーチも苦しい道のりを経なければならない。
何事も粘り強い根気が必要なのは当たり前だが、それにしてもえらいと思うのは、こういう場をつくってくださった経営者や部門長の方々である。これまた、学習する組織のテキストには、人を育てたいと思ったら、「カブを毎日引き抜いて、どれだけのびたか見るようなことをしてはいけない」と必ず書いてある。それが実践できる組織は残念ながらさほど多くはないのだが、そう言う方々にはそれを可能にするパワーや、見識、もっとはっきり言えば高い人格が備わっている。そうした方々は、そんな教科書の細部に何と書いてあるかなどはきっとご存じないだろうが、長く厳しい風雪の体験が、そうした見識と忍耐力をを醸成するのである。
もうひとつ、私のようなコンサルタントをやっていて何がうれしいかと言えば、そうした方々とのご縁故が、ひとり、またひとりと増えてゆくことである。