その13:体験学習の3要素

(2011.11.10)

■体験学習の3要素                            

アセスメント研修は、この4つの節目の場面で受講者がどのような行動を取ったかを自分自身で深くふり返る「体験学習」と言う方法論を取る、と述べた。演習を行い、自分がどのように行動しているかを鏡に映すようにして深いふり返り(リフレクション)を起こさせるのが体験学習である。
 
より言えば、マネジメントは、経験、体験なくして決して学ぶことはできない。マネジメントの教科書を何百冊読もうと、ドラッガーを全巻何度読破しようと、経験に裏打ちされていない理解は現実には通用しない(もちろん経験を積んだ上で、理論を学ぶのは大いに意味があるだろう)。しかし経験体験は、各人固有のものなので、それを客観化、普遍化し、経験体験からさらに濃厚に学ぼうとするのがここで言う体験学習なのである。その要素は三つある。
 
  第一に、自分の取った行動を自分で気づくことである。

  第二に、その自分の行動について他者からフィードバックしてもらうことである。
 
  第三に、同じ場面の他者の行動を観察して学ぶことである。  
 
ここではいちばんわかりやすい対人場面の面接演習をイメージして考えてみるとわかりやすい。                       

■自分の取った行動を自分で気づくこと

演習が始まる前に、「この面接演習は全員ビデオにとっておき、あとでそれを全員で見ますよ」と言うと、少なからぬ受講者は黙りこくったりにやにや笑ったりする。ある程度経験を積んだマネジャーならそれがどんな様子になるかわかるし、「今日は見たくないものをみなければいけないのだな」と現実が直視できる人はここで笑うのだろう。既に体験学習の予行演習である。
 
私は過去何千人とこの面接演習をしたかわからないが、自分が、重要な利害得失のかかった節目でどんな言動をしているかを10分間映像で見て、何も感じないと言う人は、まず、いない。体験学習による第一の要素は自分の行動を見て学ぶと言う気づきである。  

私たちは日常そう言うことができていればよい。しかし果たしてどうだろうか。できていると言うためには、たとえばこうだ。あなたは家に帰ったら、鏡に向かい「今日の自分の、上司や部下に対する言動はどうだったろうか」などとしみじみふり返っているだろうか。なかなか難しいことだ。家に帰って仕事の事などはあまり考えたくはないものだ。それでも考えなければならないことが昨今多いとしても、自分の行動をふり返ると言うよりは、未来の事を考えるので精一杯であろう。

 「明日の会議をどう乗り切ろうか。」

 「あのクレームの処理は来週中が限度だな。」

 「来月の成果発表でうまく説明がつくだろうか。」

 と言うように、あれこれと先々を思うのが常だろう。それはしかたない。
 
しかし、自分の行動を一切ふり返らないとして、今日から10年たったらあなたはどうなっているだろうか。極端に言うと、恐竜か、かのガラパゴスの生態系ように、外部適応力が全くなくなってしまうかも知れない。そこまでゆかなくても、あなたのいないところで関係者が内々に打ち合わせているかも知れない。
 
「あいつに話すのは最後にしよう。そうでないと話が長くなってどうしようもない。」
 
こうしてカチカチのこりかたまりになってからではもう気づきもふり返りも何もない。そんなことにならないために、
「5年か10年に一度、こうして見たくないものを見る日があってもよいでしょう。」
と私は受講者に語りかける。
 
ここで大事なことは自分で気づくと言うことが、他者からの指摘やフィードバックを納得づくで受け入れる大切な素地になることだ。
 
「君、そう言う仕事の進め方は困るよ。」
 
と上司がこんこんとお説教しても、なかなか浸透しないのはなぜかと言うと、いちばんの理由は実は上司の説得力や人間性ではない。本人が自分で気づいていないからである(もちろんそれをじょうずに気づかせるのが、人材活用のじょうずな上司とは言える)。しかも現実の利害がかかった場面では、自分悪くないのだと、本人もしっかり防衛機制を張っているから、そこに何を言っても気づきにはいたらないことが少なくない。しかし自分が面接している様子をビデオで見ながらまだ気づかない人など決していないのである。


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