その34:18の標準マネジメント能力要件…コミュニケーション能力

(2013.01.07)

■コミュニケーション能力

  
前回までの、積極性、活動性、ストレス耐性、独自性、インパクトの5つが、個人特性カテゴリーだった。今回から対人影響力のカテゴリーに入る。その最初がこのコミュニケーション能力である。と言っても、説得力や感受性は、別建ての能力要件になっているから(それらを含むと範囲が広くなり過ぎるので)、日常語感の範疇よりはやや狭く、簡単に言えば表現力のことだと思って頂いてよい。

従って特に取立てて説明する内容はないのだが、要するに、説明やプレゼンテーションのじょうずな人がこの能力が高いと言うことである。ただし、それが統率力や、説得力になっているかと言うと、別次元である。

私たちのまわりには、ひょっとすると「口は達者だが・・・・・」と言う人もいるかもしれない。


その先は「ウデのほうはどうか」「行動が伴っているか」と続くのだろう。「ウデ」や「行動」は、ふつうは統制力決断力活動性などを指すのだろう。私たちは、別段行動科学を深く研究しなくても、いざと言う時に責任を取らずに逃げ出すような行動の類型がいつ生じるかは、ほぼ本能的に気づくものだ。これに気づくと言うのは、判断力が普通以上に作用していると言うことだ。判断力を支える経験が乏しいとつい実のない巧言令色にあざむかれる。


と言って何を言っているかはよくわからないが、事実と行動をもってしっかりした影響力を持っていると言うのは、つまりコミュニケーション能力は苦手だが、統率力はあると言うのは、やや珍しい例だ。だから、「口先」だと言ってばかにしてはいけない。言っていることも明確だし、実行も伴っていると言う言行一致の姿が私たちの目指すところだろう。


コマツの坂根正弘会長がご著書でこれをいつも、王陽明の言葉を引かれて「知行合一」と表現されている。なんだ経営者レベルの話かと言うと、これは実は、私たちのように第一線で働く者にとってのほうがよほど重要である。なぜなら地位の高い経営者なら、美辞麗句に過ぎないことを言っても、その地位ゆえにあとから誰がとがめるわけでもない。しかし、言行の全く一致しないマネジャーや監督者などは、すぐさま誰からも見向きもされなくなってしまうだろう。坂根会長の凄味は、言行が明確に記録に残ってしまう経営者でありながら、その実践を厳しく自らに課されているところだろう。


どうも話は、言葉より行動のほうに重きがかかってしまうのだが、現実には何を言っているのかさっぱりわからない説明やメールにゆきあたることは少なくないものである。こういう行動の動機には、人に正確に伝えると言う関心や意欲がないのかもしれない。


上述坂根会長に学ぶと、どんな複雑な脈絡の話にも、物事の全体をよく表す「端的な一点の事実」があり、そこから「一点突破のキーワード」編み出せば、浸透力が格段に高まると言う。その例として、今世紀初頭のコマツ社長としての経営危機克服の際の例を挙げられる。どうしてアメリカのライバル会社は利益を上げられるのに、当時のコマツは赤字だったのか。日本で操業しているから人件費なりコストが高いから利益が出ないと言うのが、当時も今も常識かもしれない。この常識に疑問を持った坂根会長は、いろいろ切り込んでゆくと、つまるところ、製品(建設機械)のコスト構造は、どこでつくってもさほどの遜色はなく、コマツがライバルにおくれを取っているのは、固定費に6%もの差があることがわかった。この自社が高い6%の固定費を解消すれば利益は出る、と言う端的な一点の事実を繰り返し訴えたのだった。この場合の固定費とは、本社経費、本業とは関係にない連結対象の関連会社の経費などである。自分の会社の事だと思えばよくわかる。もしもすぐさま6%利益率を改善できる方法があるのなら誰だってすぐに飛びつき、取り組むだろう。当節、1%や2%の利益を残すことすら、大変な会社が多いのだから。

 


もちろんそのためには身を切ってリストラをしなければならない。ここで坂根会長は「リストラは1回限り」「必ず2年以内に結果を出す」、そのためには「ダントツ商品」を開発する、と次々と名フレーズを編み出した。こうしたフレーズは、関係者の心に深く刻まれたであろう。

 


 


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